アレルギー対応パンを作るつもりは、ありませんでした。
前回のお知らせで、卵・乳製品・ナッツ類を工場に持ち込まない理由を書きました。
今日はその続きで、もっと前の話です。
tontonは、アレルギー対応のパンを作るために始まったお店ではありませんでした。
はじめから「アレルギーで困っている人のために」と考えて立ち上げた事業だと思われることがあります。
でも、まったく違うんです。

最初は、普通の街のパン屋でした
2005年、スーパーの中で焼きたてパンを売る、夫婦の小さなパン屋として始まりました。
いまも「食パンのtonton」として続いているお店です。
毎日パンを焼いて、お店に並べて、お客様に買っていただく。
自分たちがアレルギー対応のパンを作ることになるとは、思ってもいませんでした。
「卵と乳製品を使っていないパンを、作っていただけませんか?」
ある日、お店の顔なじみだった女の子のお母さんから、そう相談を受けました。
小学5年生の、ちなみちゃんという女の子です。
卵と乳のアレルギーがありました。
それまで通っていたパン屋さんが、お店を閉めることになったそうです。
食べられるパンが、なくなってしまう。
困って、tontonを訪ねてこられたのでした。
正直なところ、そのときは卵も乳製品も使わずにパンが作れるのか、確信がありませんでした。
それでも、せっかくいただいたご要望に、なんとか応えたい。
その気持ちだけでした。

「フワフワで美味しい!」
はじめて手で捏ねてつくった、卵と乳製品を使わないコッペパン。
恐る恐る食べてもらうと、ちなみちゃんは満面の笑顔でこう言ってくれました。
「フワフワで美味しい!」
あの笑顔が、いまでも忘れられません。
これが、tontonの始まりです。
あの日の女の子は、もう大人になりました。
市場を調べて決めたわけでも、事業計画を立てて始めたわけでもありません。
目の前にいる一人の「食べたい」に応えようとしたら、こうなったんです。
そこから2010年に通販を始めて、2012年の春には卵・乳・ナッツを持ち込まない工場が動き出しました。
一本のコッペパンから、全部つながっています。

何のために、このパンを作っているのか
聞かれたら、答えはひとつです。
食べられない子に、食べられるパンを。
この答えは、あの日から変わっていません。
ただ、いまはもう一歩先を目指しています。
食べられるパンが1つあればいい、ではなくて。
給食の時間も、家族の食卓も、友だちの誕生日も、みんなと一緒に、同じように選べること。
「今日はどれにしようかな」と迷えること。
そのために、みんなが食べている定番のパンを、一つずつ増やしてきました。
いまtontonに並んでいるパンは、全部そのためのものです。
新しい商品を作るかどうか迷ったときも、私たちが立ち返るのはあの日のことです。
数字ではなく、困っている誰か一人の顔から考える。
そうやって決めています。

大丈夫だよ。
食べられるよ。
ここにあるよ。
あのとき言いたかったこの言葉を、これからも一人でも多くのご家族に届けていきますね。
