身近な食品ほど名前が細かくなるのは…なぜ?
お米は、たいていのお家で「いつものお米」が決まっていると思います。
買うときも、いつもの袋を手に取るだけ。
そのお米の袋には、「コシヒカリ」のような品種の名前が書かれていることが多いです。
でも、タマネギやニンジンはどうでしょう。
たいていは「タマネギ」「ニンジン」で済ませてしまいますよね。
同じ食べ物なのに、名前の細かさがずいぶん違います。
この違いがどこから来るのか、疑問に思われた方はいらっしゃいませんか?

身近なものほど、名前は細かくなる
お米は、ほぼ毎日、口にする食べ物です。
毎日食べていると、粘りや甘み、香りのちょっとした違いに気づきます。
「いつものお米」が決まっているのは、その違いが分かっているからこそ。
違いが分かるから、品種の名前にも意味が出てくるんですね。
魚にも、同じことが言えます。
tontonのある石川県では、ブリは大きさによって「コゾクラ」「フクラギ」「ガンド」、そして「ブリ」と呼び名が変わります。
育つにつれて名前が変わる、いわゆる出世魚です。
漁が身近な土地ほど、魚を細かく呼び分けてきたんでしょうね。
一方で、タマネギやニンジンにもたくさんの品種があります。
ただ、ふだんの買い物で品種を意識する場面は、お米ほど多くありません。
だから名前も、大きなくくりのままになりやすいのだと思います。
名前の細かさは、その食べ物との距離の近さなのかもしれませんね。
名前を細かく見ることに、慣れている方たち
身近なものほど、細かく見る…そう考えると、思い浮かぶ方たちがいます。
食物アレルギーのあるご家族です。
買い物のたびに、パッケージを裏返して原材料表示を読む。
「乳化剤」「マーガリン」「ショートニング」。
たった一語で、カゴに入れる手が止まることもあると思います。
tontonにも、こんなご質問が届いたことがあります。
クロワッサンの原材料に「マーガリン」とありますが、乳製品を使っているということですか?

そうですよね…。
「マーガリン」とだけ書いてあったら、乳が入っているのか、入っていないのか、分かりません。
アレルギーがあると、原材料に卵や乳が隠れていないか気になりますよね。
大きなくくりの名前では、分からないこともある
実はtontonも、以前は「乳不使用マーガリン」と書いていました。
ところが保健所から、「マーガリン」と書いてくださいと指導を受けました。
原材料名は、一般的な名前で書くことになっているのだそうです。
そこで今は、欄外に「マーガリンは卵乳不使用」と書き添えています。
ラベルの端っこの小さな一行ですが、tontonのお客様にとっては、いちばん知りたい一行だと思うからです。

砂糖にも、同じようなお話があります。
以前は、きび砂糖もてんさい糖も、まとめて「砂糖」と表記していました。
そこへ、さとうきびアレルギーのお客様からご指摘をいただいたんです。
てんさい糖を使っているなら、原材料表示もてんさい糖と書いてもらえると安心できる、と。
たしかに…せっかくてんさい糖を使っているのに、名前が「砂糖」ひとつでは、選びようがありません。
さっそく商品仕様で、「てんさい糖」と「きび砂糖」を書き分けるようにしました。
名前がひとくくりだと、本当は食べられるものまで「食べられないかもしれない」に見えてしまいます。
だからtontonは、書ける範囲で、名前を細かく書くようにしています。
tontonの小麦にも、名前があります
小麦はどうでしょう。
「国産小麦」「北海道産小麦」と、ひとまとめで呼ばれることがほとんどです。
でも、北海道産の小麦にも、よく知られた「はるゆたか」をはじめ、いくつもの品種があります。
パン屋にとって品種は、お米の「コシヒカリ」と同じくらい気になる名前なんです。
tontonが使っているのは、北海道産の小麦粉です。
パン生地に使う強力粉は
- 「はるゆたか」の後継品種で、ふわふわでもっちりとした食感と小麦の風味が強いことが特徴の「春よ恋」
- 北海道とアメリカの小麦をかけ合わせ、13年かけて日本の風土に馴染んだ新品種「ゆめちから」
この2種類をブレンドした、オリジナルの小麦粉です。
クッキーの生地やメロンパンの皮に使う薄力粉は、同じく北海道産の「きたほなみ」です。

品種の違いを思い知ったのは、2020年に小麦粉をカナダ産から国産に切り替えたときでした。
カナダ産の小麦粉と同じように作っても、全然膨らまない…
食パンは焼き上がったあとに腰折れして、横から見るとヘニャっと曲がってしまう…
悩んで、試して、また悩んで、試して…
いろんな製粉メーカーの小麦粉を試して、ようやく「これだ!」という粉に出会えたんです。
小麦もお米と同じで、品種によって味も膨らみ方も変わります。
水の入り方も違うし、採れた年によってもパンの出来が変わる。
これまで、いろいろな小麦を渡り歩いて、身をもって違いを感じています。
いつか小麦もお米のように、品種の名前で選ばれる日が来るかもしれませんね。
名前を知ると、選び方も味わい方も変わる
名前を知ることは、違いに気づく入口です。
「何を食べているか」が分かると、安心して選べます。
安心して選べると、今度は「こっちのほうが香ばしいね」「今日はこれにしよう」と、違いを楽しむ余裕が生まれます。
アレルギーがあると、どうしても「食べられるか、食べられないか」で頭がいっぱいになりがち。
tontonが届けたいのは、その先の「今日はどれにしようかな」と迷える時間です。
そのために、これからも名前はできるだけ細かく、正直に書いていきたいと思います。
いつものパンの原材料表示、よかったら一度、じっくり眺めてみてください。
きっと、これまでとは少し違って見えると思います。
関連リンク
クロワッサンの原材料に「マーガリン」とありますが、乳製品を使っているということですか?
