食品添加物不使用・無添加パンへの道

2008年にお店をオープンして以来、いろいろなパン品質改良剤を試してきました。

その中でも、一番パンの状態を安定させてくれた改良剤です。

オリエンタル酵母 ドージャスト

オリエンタル酵母 ドージャスト

オリエンタル酵母 ドージャスト

 

パン品質改良剤(ドージャスト)の原材料は?

ショ糖脂肪酸エステル

ショ糖(平たく言えば砂糖)と食用油脂から得られる脂肪酸で構成された乳化剤です。

「乳化剤」はよく乳製品ですか?と問い合わせをいただきますが、乳製品ではありません。

水と油を仲良くさせる仲人みたいなもので、水と油が混ざると白っぽくなって、牛乳のようになります。

なので、「乳のように変化する材料」というわけで、一般的に乳化剤と言います。

もう、紛らわしいから、「仲人剤」って総称にして!

 

グリセリン脂肪酸エステル

こちらも乳化剤(なたね油由来)で、「通常の食事で摂取する脂質と同じ物質」です。

よくホイップクリーム、アイスクリームに使われます。

パンのデンプンと結びついて、固くなるのを防ぎます。

 

お家でパンを焼いたことがある方はわかると思うんですが、無添加で焼いたパンはすぐに固くなってしまいます。

それは、油と水分の結びつきが弱く、どんどん水分がパンの外に出て行くからです。

水分量が少ないパンは、当然固くなってしまいます。

それを防止するために乳化剤を使っています。

 

ちなみに人間を始め動物は、必須栄養素である脂質を吸収するために、小腸で乳化剤が作っています。

これが脂質と結合して小腸の膜を通過します。

人間も、もともと体内に乳化剤を作る機能を持っているんです。

 

L-アスコルビン酸

こちらは科学的な名称で、いわゆる「ビタミンC」です。

小麦粉内のグルテンを強化し、パンの骨格作りに役立ちます。

 

α-アミラーゼ

消化酵素の一種で、微生物や果実の成熟や穀物の発芽の間に合成されます。

デンプンを細かく分解して糖に変えます。

もしかしたら、店チョの胃液でも同等の効果があるのかもしれません(笑)

 

プロテアーゼ

こちらも消化酵素で、人では小腸で分泌されます。

たんぱく質を分解する酵素で、パパイヤやパイナップル、キーウィにもたくさん含まれています。

よく、「いっしょにお肉と焼くと、やわらかくなる」のは、この酵素のおかげです。

 

グルコース

ブドウ糖のことです。

 

小麦粉

いわゆる小麦粉です(笑)

計量しやすいように、かさ増しのため入っています。

 

麦芽粉末

糖の一種で、大麦やトウモロコシから抽出します。

発酵を促し、焼き色を早くつけ、独特の香りがあります。

 

マルトース

麦芽糖のことです。

ダブルで麦芽糖が入っているのね。

ブドウ糖が二つくっついた二糖で、砂糖よりも甘味は低く、旨みがあるのが特徴です。

 

コーンスターチ

トウモロコシから作られたデンプンです。

これも小麦粉と同じく、主にかさ増しに使われています。

 

無添加のパンは難しい?

新設!無添加パンシリーズ!

イーストフードやpH調整剤を抜くことはできても、どうしても「乳化剤」と「ビタミンC」を抜くことができませんでした。

「乳化剤」は、パンの中の油と水分を仲良くさせる作用があり、長期間の柔らかさを保つことに必要。

「ビタミンC」は小麦粉のたんぱく質に作用して膨らむ力を強化し、フワフワなパンに必要でした。

 

どうしても添加物を使いたくなくて、乳化剤とビタミンCを抜いてパンを作ったことがあります。

すると、パンがあまり膨らまずフワフワにならない、翌日は水分が抜けて固いパンになりました。

どうにか添加物に頼らず、フワフワのパンは作れないものか…

 

画期的なパン品質改良剤

10年間模索してきた「添加物を使わないパン」とは?

そんな中、原材料メーカーから画期的な改良剤を発売したと連絡をいただきました。

小麦粉に作用する酵素が主原料で、乳化剤やビタミンCに変わる作用があるとのこと。

小麦粉からこの酵素を作っているそうです。

なんて画期的な改良剤!

 

こちらの酵素は、50~70℃で変成してなくなってしまうので、添加物表示は不要とのことです。

難しいことはわかりませんが、外から添加すると添加物表示が必要で、自ら作り出せるのなら添加物表示は不要ということなんですね。

 

食品添加物に頼らなくても、おいしいパンが作れた!

10年間模索してきた「添加物を使わないパン」とは?

これまでの乳化剤とビタミンCを使ったパンに比べ、味が落ちることもなく、より柔らかい。

小麦本来の甘さが際立つ、よりおいしいと感じる画期的なパンが完成しました!

 

無添加食パンの試作品をお試しいただいたお客様より、「美味しかった!」「無添加パンとは思えない!」「早く販売して!」とお喜びの声をたくさんいただきました。

時間がかかってしまいましたが、食品添加物を使わないパン生地に切り替わりました。(ただし、フィリングやハム・ウインナーなどの副材料については、食品添加物を使用したものも使用しています)

 

「無添加」の定義とは?

行政で指定された食品添加物を使用している場合、表示の義務はありますが、無添加表示には定められたルールはありません。

ルールがないために、いろんな問題が表面化しています。

「着色料無添加!」と大きく表示して、あたかも無添加食品に見せかけたり、保存料を使用する必要がないレトルト食品にわざわざ「保存料無添加!」と表示するなど。

そこで、消費者庁では「無添加・不使用表示」について、今後のルールを決める検討をしています。

 

この線引きは、とても難しいものになると思います。

なぜなら、砂糖や食塩にも加工助剤が使用されているので、厳密に言うと砂糖や食塩を使用した時点で「無添加食品」ではなくなるからです。

※加工助剤とは、食品を加工、精製するために加えられる添加物で、後に分解除去されて成分の残存がごく微量となるもの。砂糖では活性炭、食塩ではスケール防止剤など

 

食品添加物は悪者ではない

もともと食品添加物は保存性を良くしたり、食感を良くしたり、美味しそうな色を付けるために、製造メーカーが後から付け加える食品のことを言います。

もし、食品添加物を使わなかったら消費期限はあっという間に過ぎ、コンビニやスーパーに食品が並ぶことはないでしょう。

 

日本は、世界的にみてもかなり厳しい安全基準を定めています。

海外に行ったことがある方は肌で感じていると思いますが、日本の食品は世界一安全と言っても過言ではありません。

 

食品添加物は、本来「食品の安全・安心」のために使用されているものです。

その意味では、「無添加を良し」とする、ここ最近の流れは、あまりいいものとは思いません。

マスコミの責任は重大です。

 

10年間模索してきた「添加物を使わないパン」とは?

とはいえ、食品添加物に頼らなくても、「保存性を良くしたり」「食感を良くしたり」「美味しそうな色を付けたり」できるのなら、使わないほうがいい。

そう考えて、10年間ずっと模索してきた「無添加パン」への道。

ようやく納得のいく味と食感の無添加のパン生地が完成しました。

 

食品表示法が定める添加物を使用していないパンを集めたカテゴリを新設しました。

食品添加物に抵抗がある方、小麦の風味が強いパンが好きな方、防腐剤やpH調整剤を使っていなくても日持ちがする新鮮なパンをお探しの方。

そんな方にお試しいただきたいです。

矢印

無添加パン

食品表示法が定める添加物不使用

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